現金手渡し等の生前贈与を税務署に否認されないための注意点

生前贈与とは生きているうちに財産を贈与することです。相続税の課税対象である財産を減らすことができますので、相続税対策として有効な手法です。しかし、生前贈与が一定の要件を満たしていなければ税務署に否認され、相続税が課税されてしまう場合があります

仮に財産が1億円あり、そのうち7千万円を生前贈与すると財産を3千万に減らすことができます。この場合、3千万円に対して相続税が課税されますが、税務署に7千万円の生前贈与を否認されてしまうと、1億円に対して相続税が課税されてしまうことになってしまいます。

こちらのページでは生前贈与を税務署に否認されないための注意点についてご説明します。なお、現金手渡し・名義預金・へそくりは税務署に否認されてしまうケースが多々ありますので注意してください。

1.生前贈与の成立要件

生前贈与を成立させるには贈与する人と受け取る人の双方の意思表示が必要です。贈与する人が一方的に財産を渡しても、受け取る人が知らなかったり了承していないのであれば生前贈与は成立しません。

生前贈与をおこなう際は、贈与する人は受け取る人に対して「財産を与える」という意思表示をして、受け取る人は贈与する人に対して「財産を受け取る」という意思表示をしてください。贈与契約書があると生前贈与を立証しやすくなりますので、生前贈与をおこなう際は贈与契約書を作成することをお勧めします。

2.贈与契約書を作成する際の注意点

贈与契約書の作成を専門家に依頼することもできますが、自身で作成することも可能です。パソコンでも手書きでもどちらで作成しても良いのですが、署名と日付だけは自筆で記入するようにしてください。また、押印は実印を使用することをお勧めします。実印ではなくとも贈与契約書として有効なのですが、実印の方が信頼性が高まります。

贈与契約書の書式は自由ですが、最低限以下の項目は入れておきましょう。

贈与契約書に必要な項目

  • 誰に贈与するのか
  • いつ贈与するのか
  • 何を贈与するのか
  • どんな条件で贈与するのか
  • どうやって贈与するのか

こちらの項目が抜けてしまうと贈与契約書として不備のあるものになってしまいますので注意してください。なお、贈与契約書の立証力を高める方法として確定日付を取ることも有効です。確定日付とは「○年○月○日に贈与契約書が存在していた」と証明してもらうことです。

確定日付は公証人役場でもらうことができます。公証人役場に贈与契約書を持って行くと公証人が内容を確認し、問題がなければ確定日付のハンコを贈与契約書に押してくれます。このハンコには日付が漢字で押されていますので、その日に贈与契約書が存在したことを証明することができます。

3.現金手渡しの生前贈与は税務署に否認される

現金手渡しの生前贈与は証拠が残りません。相続税の税務調査では故人の預金通帳を確認されるのですが、多額の不明出金があると、その使い道について追及されます。

その際に「この100万円の出金は孫に対する生前贈与です」と説明しても、現金手渡しの場合は証拠が無いので否認されてしまうでしょう。否認されてしまうと生前贈与した100万円に対しても相続税が課税されることになってしまいます。

生前贈与をおこなう際は現金手渡しではなく銀行振込で贈与するようにしましょう。なお、銀行振込で生前贈与をおこなう場合であっても贈与契約書を作成することをお勧めします。

4.名義預金の生前贈与は税務署に否認される

名義預金とは、形式的には子供や孫の名前で預金しているのですが、実質的には親や祖父母が持っている預金のことです。子供や孫の名前で銀行口座を作成し、その銀行口座にお金を振り込むことで相続税対策をおこなおうとする方が多いのですが、この場合、生前贈与は成立していないことになります。

生前贈与を成立させるには、子供や孫が自由に使える口座にお金を振り込む必要があります。子供や孫が自由に使えない口座にお金を振り込んでしまうと、税務署から「この口座は名義を借りているだけですので実質的な口座所有者は故人とみなします」と指摘され、生前贈与を否認されてしまうでしょう。

5.へそくりの生前贈与は税務署に否認される

専業主婦の方が夫からもらった生活費の一部をへそくりとして貯めているケースがありますが、へそくりは生前贈与とみなされず相続税が課税されてしまいます。生活費は夫婦共同のお金とみなされ、生活費の残った金額は妻の財産とならないのです。

仮に「余ったお金は自由に使って良い」と夫から言われていても生前贈与とみなされません。妻に生前贈与して相続税対策をするのであれば、生活費とは別に贈与契約書を作成して贈与することをお勧めします。

6.贈与税を申告することで生前贈与の証拠を残す

贈与税は1年間に受け取った財産の合計額から基礎控除額の110万円を引いた金額に対して課税されます。1年間の贈与金額が110万円以下の場合は贈与税がかからないので、多くの方は110万円以下で生前贈与をおこないます。

しかし、あえて110万円を超える贈与をおこない、贈与税の申告と納税をすることで税務署に生前贈与の証拠を残すことができます。例えば、111万円の贈与をすると贈与税が千円だけ課税されるので、千円を支払うことで贈与した証拠を税務署に残すことができるということです。

ただし、贈与税の申告をしたからといって、生前贈与が確実に認められるわけではありません。生前贈与をした証拠の1つとして有効ではありますが、それだけで生前贈与と認められるわけではないので注意してください。

なお、贈与税の申告書を提出する際に贈与契約書のコピーを添付しましょう。相続税申告の際に、贈与契約書が相続発生後に作成されたものではなく、生前贈与がおこなわれた際に作成されたものであると証明することができます。

7.相続税対策として節税効果の高い生前贈与の金額

年齢が若く相続が発生するまで時間がある場合は毎年110万円以下を贈与し、少しずつ相続財産を減らしても良いと思いますが、相続まで時間があまり無いと考えられる場合は110万円以上の贈与をおこなった方が節税効果が高い可能性があります

例えば、相続税の税率が20%の場合、110万円を贈与すると110万円×0.2で相続税を22万円減額できたことになります。贈与額が200万円の場合は贈与税が9万円課税されますが、相続財産を200万円減らせることになりますので、200万円×0.2で相続税を40万円減額できたことになります。

生前贈与の金額 贈与税 相続税の節税効果
110万円 0円 22万円
200万円 9万円 40万円

200万円を贈与すると贈与税が9万円課税され、相続税を40万円減額できますので、40万円-9万円で31万円の節税効果が得られたことになります。110万円の贈与の節税効果は22万円でしたので、単年だけで考えた場合は110万円贈与するよりも200万円贈与した方が節税効果が高いのです。

いくら贈与したら節税効果が高いのか、相続税と贈与税はどのように計算すれば良いのかについて、詳しく知りたい方は「生前贈与のメリット・デメリットと贈与税の計算方法を解説」をご覧ください。

8.定期贈与とみなされないように注意する

定期贈与とは毎年一定の金額を贈与することが決まっている贈与のことです。毎年100万円ずつ贈与し、10年で合計1,000万円を渡すという取り決めをおこない、生前贈与をおこなった場合は定期贈与とみなされます。

定期贈与とみなされた場合は毎年の贈与額が110万円以下であったとしても、定期贈与の取り決めをおこなった年に「定期金に関する権利」を贈与したとして、贈与額の合計に対して贈与税が課税されます。例えば、毎年100万円を10年に渡って贈与するという定期贈与がおこなわれた場合、取り決めをおこなった年に1,000万円の定期金に関する権利を贈与したとして1,000万円に対して贈与税が課税されます。

定期贈与とみなされないためには、贈与の都度、贈与契約書を作成するようにしましょう。また、金額や時期も毎年同じではない方が良いと思います。定期贈与について詳しくは「連年贈与と定期贈与の違い|110万円以下でも贈与税が課税」をご覧ください。

9.死亡前3年以内の贈与には相続税が課税される

故人が亡くなる前3年以内に相続人に対して生前贈与をおこなっていた場合、その相続人の相続財産に贈与額を加算して相続税の計算をおこなう必要があります。死亡前3年以内の贈与を相続財産に加算する規定を生前贈与加算と言います。

なお、生前贈与加算の対象者は相続や遺贈により財産を取得している人です。死亡前3年以内の贈与であっても、相続や遺贈により財産を取得していない人におこなわれた贈与は生前贈与加算の対象外となります。生前贈与加算について詳しく知りたい方は「生前贈与加算とは|相続人以外への贈与は死亡前3年以内でも対象外」をご覧ください。

なお、令和6年1月1日以降の贈与により取得する財産に係る相続税については、亡くなる前3年以内は「亡くなる前7年以内」に延長されます。また、亡くなる前7以内の加算のうち、3年超7年以内に贈与した財産については、その財産の価額の合計額から100万円を控除した残高を加算します。

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