連年贈与と定期贈与の違い|110万円以下でも贈与税が課税

生前贈与とは生きている間に財産を贈与することです。相続財産を減らすことができますので相続税対策として有効な手法と言えるでしょう。1年間の贈与額が110万円以下であれば贈与税が課税されませんので、毎年110万円以下の金額を贈与する方が大勢いらっしゃいます。

しかし、毎年同じ金額を贈与し続けると定期贈与とみなされ、年間の贈与額が110万円以下であっても贈与税が課税されてしまう場合があります。こちらのページでは定期贈与とみなされないための注意点についてご説明します。生前贈与で相続税対策をおこなうことを検討している方はご参考にしてください。

1.連年贈与とは

連年贈与とは毎年贈与をおこなうことです。贈与税は1年間に受け取った金額の合計額から110万円を差し引いた金額に対して課税されます。110万円以下の贈与であれば贈与税が課税されません。したがって、一括で贈与するのではなく110万円以下に分けて毎年贈与すると節税することが可能です

例えば、20歳以上の子供が親から1,000万円を受け取った場合は贈与税の税率は30%で控除額は90万円ですので、贈与税の金額は(1,000万円-110万円)×0.3-90万円で177万円となります。

しかし、年間110万円以下ずつ贈与すると贈与税が0円になりますので、177万円の節税効果が得られます。年齢が若く相続までの期間が十分にあると考えられる場合は一括で贈与するのではなく110万円以下に分けて贈与すると良いでしょう。

  一括で贈与した場合 分けて贈与した場合
贈与税の金額 177万円 0円

贈与税の計算のやり方や贈与税の速算表について詳しく知りたい方は「生前贈与のメリット・デメリットと贈与税の計算方法を解説」をご覧ください。

2.定期贈与とは

定期贈与とは毎年一定の金額を贈与することが決まっている贈与のことです。例えば、1,000万円を100万円ずつに分けて毎年贈与するという取り決めをおこない、生前贈与をおこなった場合は定期贈与となります。

定期贈与の場合は毎年の贈与金額が110万円以下であっても、定期贈与の取り決めをおこなった年に「定期金に関する権利」の贈与を受けたとして、贈与額の合計額に対して贈与税が課税されます

毎年100万円を10年間にわたって贈与するという定期贈与の取り決めがおこなわれた場合、取り決めをおこなった年に1,000万円の定期金に関する権利を贈与したとして、1,000万円に対して贈与税が課税されます。

なお、定期贈与に関するQ&Aが国税庁のタックスアンサーに掲載されていますので、参考に掲載します。

定期贈与に関する国税庁のタックスアンサー

Q.毎年100万円ずつ10年間に渡って贈与を受ける場合、各年の受贈額が110万円以下の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか?

A.各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下である場合には贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。ただし、10年間に渡って毎年100万円ずつ贈与を受けることが贈与者との間で約束されている場合には、1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、約束した年に「定期金に関する権利(10年間に渡り毎年100万円ずつの給付を受ける権利)」の贈与を受けたものとして贈与税がかかりますので申告が必要です。

3.連年贈与と定期贈与の違い

連年贈与も定期贈与もどちらも毎年贈与をおこなうことを指しますが、連年贈与と定期贈与の違いは「たまたま毎年贈与をおこなっていた」のか「予め取り決めがあって毎年贈与をおこなっていた」のかです。

たまたま毎年贈与をおこなっていたのであれば連年贈与とみなされ、毎年贈与額に対して贈与税が課税されます。予め取り決めがあって毎年贈与をおこなっていたのであれば定期贈与とみなされ、贈与額の合計に対して贈与税が課税されます。

4.生前贈与を定期贈与とみなされないための方法

生前贈与を定期贈与とみなされないためには贈与する度に贈与契約書を作成しましょう。仮に10年間にわたって毎年100万円を贈与することが決まっていたとしても、贈与の都度、贈与契約書を結ぶことをお勧めします。

また、贈与する金額や時期もできれば毎年同じではない方が良いと思います。毎年単発の贈与が発生しているとみなされるように生前贈与をおこなうと良いでしょう。

5.税務署は連年贈与と定期贈与をどのように判断するのか

生前贈与が連年贈与と定期贈与のどちらとも判断できる場合、税務署は税額がより多い方で判断します。連年贈与とみなした方が多額の税金を徴収できる場合は連年贈与とみなし、定期贈与とみなした方が多額の税金を徴収できる場合は定期贈与とみなすでしょう。

例えば、2,000万円を毎年200万円ずつ贈与していた場合、通常であれば定期贈与とみなされ、取り決めがおこなわれた年に定期金に関する権利が贈与されたとして2,000万円に対して贈与税が課税されます。しかし、税務署が定期贈与を見つけたのが贈与を開始してから7年後である場合、贈与税の除斥期間である6年が経過しているので贈与税を支払わなくとも良いことになります

このような場合、定期贈与とみなすと贈与税を徴収できなくなってしまいますので税務署は「単なる連年贈与」とみなします。単なる連年贈与の場合、7年前の贈与については除斥期間が過ぎていますが、6年前以降の贈与については贈与税を支払わなければいけません。

定期贈与とみなした場合 連年贈与とみなした場合
全て時効 7年前のみ時効

定期贈与と連年贈与のどちらの方が贈与税の金額が大きくなるかについては、状況に応じて異なりますが、余計な指摘を受けないためにも定期贈与にならないように対策しておくことをお勧めします。

6.生前贈与を税務署に否認されないための注意点

生前贈与で相続税対策をおこなったとしても、税務署に生前贈与を否認され、贈与額に対して相続税が課税されてしまう場合があります。例えば、生前贈与を現金手渡しでおこなってしまうと生前贈与をおこなった証拠が無いので、贈与額に対して相続税が課税されてしまう場合があります。

生前贈与をおこなう際は証拠を残すために銀行振込で贈与しましょう。なお、贈与契約書を作成すると生前贈与を立証しやすくなりますので、贈与の都度、贈与契約書を作成することをお勧めします。

また、孫の銀行口座を作成し、その口座に預金を移すことで相続財産を減らそうとする方がいらっしゃいますが、この場合、生前贈与は成立していないことになります。孫に生前贈与をおこなうのであれば孫が普段使っている口座に振り込む必要があります。

専業主婦の方が夫からもらった生活費の一部をへそくりとして貯めているケースもありますが、へそくりは生前贈与とみなされず、相続税が課税されてしまいます。生前贈与を税務署に否認されないための注意点について詳しく知りたい方は「現金手渡し等の生前贈与を税務署に否認されないための注意点」をご覧ください。

7.死亡前3年以内の贈与は相続税の課税対象

死亡前3年以内に故人が相続人に対して生前贈与をおこなっていた場合、その贈与額を相続人の相続財産に含めなければいけません。この規定を生前贈与加算と言います。余命が短いことが分かってから慌てて生前贈与をしても相続税に加算されてしまいます。

なお、令和6年1月1日以降の贈与により取得する財産に係る相続税については、亡くなる前3年以内は「亡くなる前7年以内」に延長されます。また、亡くなる前7以内の加算のうち、3年超7年以内に贈与した財産については、その財産の価額の合計額から100万円を控除した残高を加算します。

ただし、生前贈与加算の対象者は「相続や遺贈により財産を取得する人」です。相続や遺贈により財産を取得しない人であれば生前贈与加算は適用されません。生前贈与加算について詳しく知りたい方は「生前贈与加算とは|相続人以外への贈与は死亡前3年以内でも対象外」をご覧ください。

8.暦年贈与と相続時精算課税制度

暦年贈与とは1月1日~12月31日の1年間に贈与した金額の合計から基礎控除額110万円を差し引き贈与税を計算する制度のことです。通常の贈与は暦年贈与でおこなわれますが、60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子供や孫に贈与する場合、相続時精算課税制度で贈与することができます。

相続時精算課税制度とは2,500万円まで無税で贈与できる制度です。ただし、相続時に贈与額に対して相続税が課税されますので節税効果はほとんどありません(令和6年1月1日以降の贈与については、毎年110万円の基礎控除があり、かつ、この基礎控除は暦年課税の場合の生前贈与加算の対象にもならないため、ケースによっては暦年課税よりも節税効果があります)。相続時精算課税制度について詳しく知りたい方は「相続時精算課税制度のデメリットと注意点|節税効果はない」をご覧ください。

9.相続税対策の相談

こちらのページでは定期贈与とみなされないための注意点についてご説明しました。生前贈与をおこなう際は様々な注意点がありますので事前に専門家に相談することをお勧めします。また、生前贈与以外にも相続税対策の手法は数多くありますので他の節税手法も組み合わせて相続税対策をおこなうと良いでしょう。

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