故人の事業を手伝ったり、療養看護をしていた相続人は、他の相続人よりも遺産分割で優遇される場合があります。故人の財産維持に貢献した相続人の相続分を増額する規定を「寄与分」と言います。こちらのページでは寄与分の計算方法と具体例についてご説明します。遺産の分け方について話し合う際に寄与分を主張されたい方はご参考にしてください。
寄与分とは相続人の中に故人の財産維持に貢献した人がいる場合、その貢献度に応じて相続財産を増額する規定です。寄与分が認められるための要件は下記のとおりです。
寄与分として認められる行為を5つご紹介します。
故人の事業を手伝っていた相続人は故人の財産形成に貢献したとみなされ、寄与分が認められる可能性があります。ただし、給与をもらっていたのであれば寄与分は認められません。無償または少ない給与で事業を手伝っていたのでなければ寄与分は認められないでしょう。
故人が老人ホームに入居する際の費用を負担していたり、故人の借金を代わりに弁済していたりした場合は、故人の財産維持に貢献したとみなされ寄与分が認められる可能性が高いでしょう。なお、故人の会社への金銭出資は寄与にはあたらないとされています。
相続人が仕事を辞めるなどして、故人の介護に長期間にわたって専念していた場合は寄与分が認められる可能性が高いでしょう。ただし、話し相手になったり、身の回りの世話をしたりするなど、通常期待される程度の介護である場合、寄与分は認められません。
故人の生活費を負担していた場合は寄与分が認められる可能性があります。ただし、夫婦、親子、兄弟姉妹であれば相互に扶養する義務がありますので、通常考えられる範囲を超えて扶養していなかったのであれば寄与分が認められることは難しいでしょう。
故人の不動産を売却する際、故人に代わって手続きをしたり、入居者との立ち退き交渉にあたったりしていた場合、寄与分が認められる可能性が高いでしょう。また、故人の財産を相続人が無償で管理することで、管理費用の支出を免れた場合にも寄与分が認められます。
寄与分の算定は様々な事情を考慮するという規定があるだけですので、明確な基準があるわけではありません。遺産分割協議で寄与分が認められず、裁判所の調停で寄与分を決める際、次のように判断する場合がありますので一つの目安としてください。
相続人が故人の事業を手伝っていた場合、本来受け取るべき給与額が寄与分となります。ただし、相続人が故人と同居しており、相続人の生活費の負担が軽減されていた場合はその分を控除します。家事従事型の寄与分の算定式は次のとおりです。
<家事従事型の寄与分の算定式>
寄与者が受け取るべき年間の給付額×(1-生活費控除割合)×寄与年数=寄与分額
基本的に贈与した金額が寄与分となりますが、そのままの金額ではなく、貨幣価値の変動や裁量的な割合を考慮して算定します。金銭等出資型の寄与分の算定式は次のとおりです。
<金銭等出資型の寄与分の算定式>
贈与額×貨幣価値変動率×裁量的割合=寄与分額
本来であればお金を支払って付添介護人に介護をしてもらうところを相続人が介護をしていた場合、付添介護人に支払うはずであった費用が寄与分となります。療養看護型の寄与分の算定式は次のとおりです。
<療養看護型の寄与分の算定式>
付添介護人の日当額×療養看護日数×裁量的割合=寄与分額
通常考えられる扶養の範囲を超えて生活費を負担していた場合、次の算定式で寄与分を計算します。なお、法定相続分とは民法で定められた相続分の目安です。法定相続分については「法定相続分とは|どの相続人が遺産をどのくらいもらえるのか」をご覧ください。
<扶養型の寄与分の算定式>
負担した扶養額×期間×(1-寄与相続人の法定相続分割合)=寄与分額
不動産の売却手続きや管理を相続人が代わりにおこなった場合、第三者に委任した際にかかる費用が寄与分となります。財産管理型の寄与分の算定式は次のとおりです。
<財産管理型の寄与分の算定式>
管理や売却を第三者に委任した場合の報酬額×裁量的割合=寄与分額
寄与分がある場合、まず遺産総額から寄与分を差し引きます。次に寄与分を引いた金額を相続人全員で分割します。そして、寄与分がある相続人の相続分に寄与分を足し合わせます。寄与分がある相続人と寄与分がない相続人の相続分の計算式は次のとおりです。
(遺産総額-寄与分)×法定相続分+寄与分=相続分
(遺産総額-寄与分)×法定相続分=相続分
遺産総額が4,000万円、相続人が長男と二男の2人、長男に認められた寄与分が1,000万円である場合の相続分について考えてみましょう。
まず、遺産総額4,000万円から寄与分1,000万円を差し引くと3,000万円となります。3,000万円を2人で均等に分けると1人あたりの相続分は1,500万円です。長男には1,000万円の寄与分がありますので、長男の相続分は1,500万円+1,000万円で2,500万円です。したがって、長男の相続分は2,500万円、二男の相続分は1,500万円となります。
相続人 | 寄与分を考慮した相続分 |
---|---|
長男 | 2,500万円 |
二男 | 1,500万円 |
故人が遺言書を作成していた場合、遺言書のとおりに遺産を分けます。遺言書によって遺産を譲ることを遺贈と言います。遺贈も寄与分も両方ある場合は遺贈が優先されます。相続財産から遺贈の価額を差し引き、残った財産から寄与分を差し引いて相続分を計算します。
したがって、全ての相続財産が遺贈の対象である場合、寄与分はありません。なお、遺言書で寄与分を定めることはできません。相続人全員の協議もしくは裁判所の裁量で寄与分の価額を決めることになります。遺言書の書き方や文例について詳しく知りたい方は「遺言書の書き方と文例|効力が無い遺言書を作成しないための注意点」をご覧ください。
遺言書の作成は弁護士・司法書士・行政書士・税理士など様々な専門家が取り扱っていますが、どの専門家に相談すれば良いのでしょうか?相続税が発生する見込みが高いのであれば税理士に相談することをお勧めします。税理士以外の専門家は税金の専門家ではないため、どのように分けたら相続税が安くなるのかといった視点が漏れてしまうおそれがあります。
佐藤和基税理士事務所では遺産をどのように分けたら、いくら相続税が課税されるのかシミュレーションを作成することが可能です。遺言書を作成する際はシミュレーション結果をご参考にしていただき、相続税ができるだけ課税されないように遺産を分けることをお勧めします。なお、遺言書の作成や手続きを当事務所にお任せいただくことも可能です。佐藤和基税理士事務所の相続税対策サービスの詳細については下記ページをご覧ください。
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