中小企業ではオーナーである役員が会社にお金を貸していることが多々あります。役員から会社への貸付金が法人税や所得税の観点で問題になることはほとんどありません。しかし、相続税の観点では大きな問題となる場合があります。
こちらのページでは役員借入金が相続時にどのような問題になるのかご説明します。会社への貸付金債権がある方はご参考にしてください。
会社の売上が悪く、従業員に給料が払えなかったり、取引先への支払いができなかったりする場合、役員が会社にお金を貸すことがあります。このように役員が会社に貸しているお金のことを役員借入金と言います。なお、貸しているお金を返すよう請求できる権利を貸付金債権と言います。
会社にお金を貸している役員が亡くなった場合、役員の貸付金債権は相続財産として相続税が課税されます。例えば、父親が社長で会社に1億円を貸し、そのままお金を返してもらうことなく亡くなった場合、相続財産に1億円の貸付金債権が含まれます。1億円の貸付金債権を相続した人は相続税を支払わなければいけません。
貸付金債権の金額が少なければ大きな問題にはなりませんが、何年、何十年と会社経営をしていた場合、貸付金債権が積み重なり、貸付金債権の金額が数億円に上ることも少なくありません。
貸付金債権の回収が著しく困難であれば、相続財産に含めなくとも良い場合もありますが、会社が債務超過の状態という理由だけでは回収可能性があると判断されてしまい、相続税の課税対象になってしまいます。回収が不可能であることを立証することは難しいため、生前に貸付金債権を整理することをお勧めします。
役員借入金を生前に整理する方法を4つご紹介します。
役員報酬を減らし、その差額を役員借入金の返済に充てることで役員借入金を減らすことができます。この方法であれば現時点で支払っている役員報酬の代わりに役員借入金の弁済金を支払うことになりますので、今以上の資金を必要としません。
なお、役員借入金の弁済金には所得税や住民税の課税を受けることはありませんので、個人の税金を低く抑えることが可能です。
貸付金債権を贈与するのも有効です。ただし、貸付金債権を贈与する際に贈与税が課税されます。贈与税の非課税枠は年間110万円ですので、貸付金債権を年間110万円以下ずつ贈与すれば贈与税が課税されません。
なお、毎年決まった金額を贈与すると定期贈与とみなされ、年間110万円以下の贈与であっても贈与税が課税される場合があります。定期贈与について詳しく知りたい方は「連年贈与と定期贈与の違い|110万円以下でも贈与税が課税」をご覧ください。
会社が債務超過で役員借入金に実質的な価値がない場合は、貸付金債権を放棄しても良いと思います。貸付金債権を放棄するには、役員から会社に貸付金を免除する旨を書いた内容証明郵便を出します。
ただし、貸付金債権を放棄すると、会社では債務免除益という収益が生じます。したがって、税務上の赤字である繰越欠損金の範囲内で債権放棄をおこなうと良いでしょう。
デット・エクイティ・スワップとは、会社への貸付金債権を株式に交換することです。例えば、会社に1,000万円を貸している場合、その1,000万円の貸付金債権で1,000万円分の株式を取得するということです。貸付金債権が株式に代わることで役員借入金が減るだけではなく、事業承継税制が適用される可能性があります。
なお、事業承継税制は平成30年度の税制改正で最大100%の納税猶予を受けられるようになりました。事業承継税制の改正内容について詳しく知りたい方は「平成30年度の相続税・贈与税の税制改正大綱のポイント」をご覧ください。
役員借入金の相続税対策の方法についてご説明しましたが、実行する際には必ず税理士に相談しましょう。債権の繰越欠損金の金額や株主間の贈与税課税の問題など、考慮しなければならないことが多々あります。
また、回収が著しく困難であるにもかかわらず貸付金債権を相続財産に計上し、既に相続税を申告してしまった方もいらっしゃると思います。亡くなってから5年10ヶ月以内であれば貸付金債権を相続財産から除き、申告金額を修正できる場合があります。既に支払っていた分との差額については税務署から返金されます。なお、払い過ぎた相続税を返金してもらうことを相続税還付と言います。
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