相続時精算課税制度の3つのデメリットと注意点|節税効果はない

相続時精算課税制度とは親や祖父母が子供や孫に対して財産を贈与する際に利用できる制度です。相続時精算課税制度を利用して生前贈与をすると2,500万円まで無税で贈与することが可能です。しかし、相続時精算課税制度にはデメリットがあります。

こちらのページでは相続時精算課税制度の概要と3つのデメリットについてご説明します。相続時精算課税制度の利用を検討している方はご参考にしてください。

1.相続時精算課税制度とは

60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子供や孫に贈与する際に「相続時精算課税制度」という制度を使うことを選択することができます。相続時精算課税制度を選択した場合、それ以降の贈与については合計2,500万円まで贈与税が無税となります。

ただし、相続発生時に相続時精算課税制度で贈与した財産を相続財産に加えて相続税を計算する必要があります。したがって、税金の支払いを相続発生時に先送りしているだけと考えることもできます。

2.暦年贈与とは

暦年贈与とは1月1日~12月31日の期間の贈与額の合計から110万円を差し引き、贈与税を計算する制度です。相続時精算課税制度の手続きをしなければ贈与税の金額を暦年贈与で計算することになります。暦年贈与で贈与税を計算する方法について詳しく知りたい方は「生前贈与のメリット・デメリットと贈与税の計算方法|相続税対策」をご覧ください。

3.相続時精算課税制度の具体例

20歳以上の子供が事業を始める際、60歳以上の父親が開業資金として2,110万円を子供に贈与したとします。暦年贈与で贈与税を計算すると贈与税の金額は635万円です。

仮に2,110万円を相続時精算課税制度で贈与したとすると2,110万円を無税で贈与することが可能です。次の年に更に200万円を子供に贈与した場合、この200万円も相続時精算課税制度で贈与したことになります。相続時精算課税制度を選択した後の贈与は全て相続時精算課税制度を利用した贈与となります。暦年贈与に戻すことはできません。

相続時精算課税制度で贈与した金額の合計は2,110万円+200万円で2,310万円です。贈与額の合計が2,500万円を超えるまで贈与税は課税されません。ただし、相続発生時に贈与額の合計を子供の相続財産に加えて相続税を計算しますので、相続税が課税されることになります。

4.相続時精算課税制度の税金の計算方法

相続時精算課税制度を利用しておこなった贈与額の合計が2,500万円を超えた場合、超えた分に対して一律で20%の贈与税が課税されます。そして、相続時に贈与額の合計が相続財産に加算され、相続税が課税されます。なお、贈与額の合計が2,500万円を超え、贈与税を支払っている場合は相続税から支払った贈与税額を差し引くことができます。

相続時精算課税制度の税金の計算例

平成27年に相続時精算課税制度を利用して父親から子供に2,000万円を贈与し、平成28年に100万円を贈与、平成29年に900万円を贈与したとします。この場合、相続時精算課税制度を利用しておこなわれた贈与額の合計額は3,000万円です。

贈与時期 贈与額
平成27年 2,000万円
平成28年 100万円
平成29年 900万円
合計 3,000万円

相続時精算課税制度を利用しておこなった贈与額の合計が3,000万円ですので、2,500万円を超えた分に対して贈与税を支払う必要があります。贈与税の金額は「(贈与額の合計-2,500万円)×0.2」で計算します。

(2,000万円+100万円+900万円)-2,500万円×0.2=100万円

贈与額の合計3,000万円から2,500万円を差し引いた金額である500万円に対して20%の贈与税が課税されますので、贈与税の金額は500万円×0.2で100万円となります。

その後、贈与がおこなわれることなく父親が亡くなった場合、子供の相続財産に3,000万円が加算されます。なお、贈与税として100万円を既に納めていますので子供の相続税から100万円を控除します。相続税の計算方法について詳しく知りたい方は「【相続税の計算方法】相続税の税率と計算の流れについて解説」をご覧ください。

5.相続時精算課税制度の節税効果

相続時精算課税制度を利用すると合計2,500万円まで無税で贈与できますが、相続時に相続税が課税されます。したがって、節税効果は基本的にありません。ただし、贈与時から相続時までに時価が大幅に上昇する財産を相続時精算課税制度で贈与する場合は節税になります。

例えば、5年後に時価が1,000万円から2,000万円に上がる財産があり、5年後に相続が発生するとします。この場合、相続時には時価が2,000万円になっていますので2,000万円に対して相続税が課税されます。

この財産を時価が1,000万円のうちに相続時精算課税制度を利用して贈与しておくと、相続時に時価が2,000万円になっていたとしても、贈与時の時価は1,000万円ですので1,000万円に対して相続税が課税されます。時価が上がることが確実であれば、時価が上がる前に相続時精算課税制度を利用して贈与することで節税できます

受け取り方 相続税の課税価格
死亡時に相続でもらう場合 2,000万円
相続時精算課税制度でもらう場合 1,000万円

6.相続時精算課税制度の手続き

相続時精算課税制度を選択する場合は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに相続時精算課税選択届出書を提出する必要があります。なお、提出時に受贈者と贈与者の「戸籍謄本」や「住民票」等の書類の添付を求められます。

7.相続時精算課税制度のデメリット

相続時精算課税制度のデメリットを3つご紹介します。

相続時精算課税制度のデメリット①暦年贈与が使えなくなる

相続時精算課税制度を利用して贈与をおこなった場合、それ以降の贈与は全て相続時精算課税制度での贈与となります。暦年贈与に戻すことはできません。暦年贈与は年間の贈与額が110万円以下であれば無税となりますが、相続時精算課税制度の場合は年間の贈与額が110万円以下であっても相続時に相続財産に加算され、相続税が課税されてしまいます

相続時精算課税制度のデメリット②110万円以下の贈与でも申告の必要がある

暦年贈与には110万円の基礎控除がありますので、年間110万円以下の贈与であれば贈与税が課税されず、贈与税の申告をする必要がありません。しかし、相続時精算課税制度を選択すると年間110万円以下の贈与であっても贈与した年は税務署に申告手続きをする必要があります

相続時精算課税制度のデメリット③小規模宅地等の特例が使えない

小規模宅地等の特例とは一定の要件を満たすと土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。相続時精算課税制度を利用して土地を贈与した場合、その土地に小規模宅地等の特例を適用することができません。小規模宅地等の特例について詳しく知りたい方は「小規模宅地等の特例の要件【2019年改正】|土地の相続税評価を減額」をご覧ください。

8.生前贈与の注意点

生前贈与で相続税の節税対策をする際の注意点を3つご紹介します。

生前贈与の注意点①現金手渡しで贈与しない

現金手渡しの贈与は証拠が残りませんので生前贈与をおこなう際は銀行振込で贈与するようにしましょう。税務署に生前贈与を否認され、贈与額に対して相続税が課税されてしまう場合があります。生前贈与を税務署に否認されないための注意点について詳しく知りたい方は「現金手渡し等の生前贈与を税務署に否認されないための注意点」をご覧ください。

生前贈与の注意点②定期贈与とならないようにする

定期贈与とは毎年一定の金額を贈与することが決まっている贈与のことです。定期贈与とみなされた場合、毎年の贈与額が110万円以下であっても贈与税が課税されることがあります。定期贈与について詳しく知りたい方は「連年贈与と定期贈与の違いと注意点|110万円以下でも贈与税が課税」をご覧ください。

生前贈与の注意点③亡くなる直前に贈与しない

死亡前3年以内に故人が相続人に贈与をおこなっていた場合、贈与額を相続人の相続財産に含めて相続税を計算します。死亡前3年以内の贈与額を相続財産に加算する規定を「生前贈与加算」と言います。生前贈与加算について詳しく知りたい方は「生前贈与加算とは|相続人以外への贈与は死亡前3年以内でも対象外」をご覧ください。

9.相続税対策の相談

相続時精算課税制度に節税効果は基本的にありませんが、相続税を節税するための手法は数多くあります。効果的な節税手法は相続財産や相続人の状況によって異なりますので専門家に相談することをお勧めします。

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