生前贈与のメリット・デメリットと贈与税の計算方法を解説

相続税の節税対策をする方法の中で特に取り組みやすいのは「生前贈与」でしょう。亡くなる前に財産を渡すことで、相続税の課税対象となる財産を減らすことができます。こちらのページでは生前贈与の2つのメリットと4つのデメリットについてご説明します。贈与税と相続税の計算方法についても解説しておりますので、ご参考にしてください。

1.生前贈与とは

生前贈与とは生存している個人から別の個人へ財産を無償で渡すことです。主に相続税の節税対策を目的としておこなわれます。生前贈与をおこなうと相続税の課税対象となる財産を減らすことができますが生前贈与の際に贈与税が課税されます。生前贈与をおこなう際は相続税と贈与税を試算し、どうしたら税金が安くなるのか確認する必要があるでしょう。

なお、生前贈与をおこなう人を「贈与者」、受け取る人を「受贈者」と呼びます。受贈者は生前贈与を受ける際に暦年課税か相続時精算課税のどちらかを選択することができます。

生前贈与の受け取り方①暦年課税

暦年課税とは受贈者が1月1日~12月31日までの1年間に受け取った財産の合計額が110万円を超えた場合、110万円を超えた分に対して贈与税が課税される制度です。受贈者が相続時精算課税の申請をしなければ暦年課税を選択したことになります。

生前贈与の受け取り方②相続時精算課税

相続時精算課税は60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子供や孫へ贈与する場合に選択することが可能です。相続時精算課税を選択すると受け取った額の合計が2,500万円を超えるまで贈与税が無税となります。ただし、相続時に受け取った分に対して相続税が課税されます。相続時精算課税の仕組みやデメリットについて詳しく知りたい方は「相続時精算課税制度のデメリットと注意点|節税効果はない」をご覧ください。

2.生前贈与で相続税の節税対策をするメリット

生前贈与で相続税の節税対策をするメリットを2つご紹介します。

生前贈与のメリット①相続財産を減らすことができる

暦年課税で生前贈与をおこなう場合、年間の贈与額が110万円以下であれば贈与税が課税されません。そのため、110万円以下に分けて贈与をおこなうことで、贈与税が課税されずに相続税の課税対象となる財産を減らすことができます。

仮に現金を1,000万円持っている場合、亡くなると1,000万円に対して相続税が課税されます。しかし、生きている間に110万円を子供に贈与すると贈与税が課税されずに現金を1,000万円から890万円に減らすことができますので、890万円に対して相続税が課税されます。

  相続財産
110万円を生前贈与しない場合 1,000万円
110万円を生前贈与した場合 890万円

生前贈与のメリット②財産を自由に贈与することができる

民法では故人の遺産を誰が相続するかについて定められていますが、生前贈与であれば誰に何を渡しても自由です。親族以外に生前贈与をおこなうことも可能です。なお、遺言書でも誰にどの遺産を渡すのか指定することができますが、生前贈与の方が手続きが簡単です。

なお、民法で定められた相続人のことを「法定相続人」と言います。誰が法定相続人になるかについて詳しく知りたい方は「法定相続人の範囲と相続順位|誰が遺産をいくら相続するのか」をご覧ください。

3.生前贈与で相続税の節税対策をするデメリット

生前贈与で相続税の節税対策をするデメリットを4つご紹介します。

生前贈与のデメリット①税務署に否認されるリスクがある

生前贈与を成立させるためには贈与者と受贈者の双方の意思表示が必要です。受贈者が生前贈与について知らなかったり、了承していなければ生前贈与は成立しません。生前贈与をおこなう際は贈与契約書を作成すると生前贈与を立証しやすくなりますので、贈与の都度、贈与契約書を作成するようにしましょう。

なお、現金手渡し・名義預金・へそくり等は税務署に否認されてしまうケースが多々あります。生前贈与を税務署に否認されないための注意点については「現金手渡し等の生前贈与を税務署に否認されないための注意点」をご覧ください。

生前贈与のデメリット②定期贈与とみなされるリスクがある

年間の贈与額が110万円以下であれば贈与税が課税されませんが、毎年同じ金額を贈与し続けると定期贈与とみなされ、年間の贈与額が110万円以下であっても贈与税が課税されてしまう場合があります。

定期贈与とは毎年一定の金額を贈与することが決まっている贈与のことです。定期贈与の場合、定期贈与の取り決めをした年に「定期金に関する権利」の贈与を受けたとして贈与額の合計金額に対して贈与税が課税されます。例えば、毎年100万円を10年に渡って贈与するという取り決めがおこなわれた場合、取り決めをおこなった年に1,000万円の定期金に関する権利を贈与したとして1,000万円に対して贈与税が課税されます。

定期贈与とみなされないための対策方法について詳しく知りたい方は「連年贈与と定期贈与の違い|110万円以下でも贈与税が課税」をご覧ください。

生前贈与のデメリット③贈与者の生活を圧迫するリスクがある

多くの財産を生前贈与してしまうと贈与者の生活を圧迫してしまうおそれがあります。税金の節税だけについて考えるのではなく、贈与者の生活を第一に考えましょう。

生前贈与のデメリット④死亡前3年以内の贈与は相続税の対象

死亡前3年以内に故人から相続人に対しておこなわれた贈与については、死亡時に相続人の相続財産に加算され、相続税が課税されてしまいます。死亡前3年以内の贈与を加算する規定のことを生前贈与加算と言います。生前贈与加算について詳しく知りたい方は「生前贈与加算とは|相続人以外への贈与は死亡前3年以内でも対象外」をご覧ください。

なお、令和6年1月1日以降の贈与により取得する財産に係る相続税については、亡くなる前3年以内は「亡くなる前7年以内」に延長されます。また、亡くなる前7以内の加算のうち、3年超7年以内に贈与した財産については、その財産の価額の合計額から100万円を控除した残高を加算します。

4.贈与税の計算方法

贈与税の基礎控除額は年間110万円です。贈与した金額が1年間で110万円以下であれば贈与税を支払う必要はありません。贈与税の計算方法は以下のとおりです。

贈与税の課税対象となる金額

1年間の贈与額-110万円=贈与税の課税対象となる金額

贈与税額の計算式

贈与税の課税対象となる金額×税率-控除額=贈与税額

税率と控除額は課税対象となる金額に応じて異なります。具体的な数字については下記の2つの速算表をご参照ください。なお、「速算表」とは課税対象の金額に応じた税率と控除額がわかる表のことで、「直系尊属」とは親や祖父母などの直系の親族のことです。

18歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率と控除額

贈与税の課税対象となる金額 税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超〜400万円以下 15% 10万円
400万円超〜600万円以下 20% 30万円
600万円超〜1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円超〜1,500万円以下 40% 190万円
1,500万円超〜3,000万円以下 45%

265万円

3,000万円超〜4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

上記以外の場合の贈与税の税率と控除額

贈与税の課税対象となる金額 税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超〜300万円以下 15% 10万円
300万円超〜400万円以下 20% 25万円
400万円超〜600万円以下 30% 65万円
600万円超〜1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超〜1,500万円以下 45%

175万円

1,500万円超〜3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

5.贈与税と相続税の比較

相続税の税率と控除額については以下の速算表のとおりです。

相続税の税率と控除額

相続税の課税対象となる金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超〜3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超〜5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超〜1億円以下 30% 700万円
1億円超〜2億円以下 40% 1,700万円
2億円超〜3億円以下 45%

2,700万円

3億円超〜6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

贈与税と相続税の速算表を比較すると贈与税の方が税率が高いことがわかります。相続税を減らすために安易に生前贈与をしてしまうと、かえって税金が高くなってしまうことがありますので注意してください。

6.節税効果の高い贈与額

贈与税の基礎控除額である110万円以下の金額を贈与する方が多いのですが、110万円以上の金額を贈与する方が節税できる場合もあります。下記の表は贈与税と相続税の節税額を比較したものです。なお、相続税の税率は20%で、20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税で計算しています。

贈与税と相続税の節税額の比較

年間の贈与額 ①贈与税額 ②相続税節税額 節税効果②−①
110万円 0円 22万円 22万円
200万円 9万円 40万円 31万円
500万円 48.5万円 100万円 51.5万円
510万円 50万円 102万円 52万円
600万円 68万円 120万円 52万円
800万円

117万円

160万円 43万円
1,000万円 177万円 200万円 23万円

年間110万円を贈与した場合は相続財産を110万円減らせるので110万円×0.2で相続税を22万円減額できます。

年間200万円を贈与した場合は(200万円-110万円)×0.1で贈与税が9万円課税されますが、相続財産を200万円減らせるので200×0.2で相続税を40万円減額できます。贈与税が9万円課税されますが、相続税を40万円減額できますので、40万円-9万円で31万円の節税効果が得られます。

年間110万円の贈与の節税効果が22万円で、年間200万円の贈与の節税効果が31万円ですので、年間200万円を贈与した方が節税効果が大きいことがわかります。

年間510万円を贈与した場合の節税効果

単年度だけで考えると最も節税効果が高いのは年間510万円の贈与です。年間510万円を贈与した場合の節税効果は次のとおりです。

贈与税の課税対象となる金額は510万円-110万円で400万円です。速算表を確認すると、贈与税の課税対象となる金額が400万円の場合の贈与税の税率は15%で控除額は10万円ですので、400万円×0.15-10万円で贈与税は50万円となります。

相続税の税率が20%の場合、510万円の相続財産に課税される相続税は510万円×0.2で102万円です。年間510万円を贈与すると50万円の贈与税が課税されますが、相続税を102万円減額できますので、節税効果は102万円-50万円で52万円です。

不動産小口化商品との組合せ

高額な生前贈与を検討する場合は、不動産小口化商品を組合せることで大きく節税することもできます。
不動産小口化商品は、特定の不動産を1口100万円など、小口化して販売する商品で、賃料収入等を所有口数に応じて出資者に分配する商品です。
不動産小口化商品の相続税評価額については、小規模宅地等の特例を考慮する前でも20%から30%程度に圧縮されます。

例えば1,000万円分の不動産小口化商品を購入した場合は、相続税評価額が200万円から300万円程度になりますので、現金を贈与するよりも贈与税負担が大きく圧縮されます。

不動産小口化商品を活用した生前贈与について詳しく知りたい方は「不動産小口化商品を使って相続対策|生前贈与と組合せて圧縮」をご覧ください。

7.生前贈与以外の相続税の節税対策の手法

生前贈与以外にも相続税の節税対策の手法は数多くあります。例えば、生命保険には相続税の非課税枠があり、「500万円×法定相続人の数」が非課税となります。法定相続人が3人の場合は500万円×3人で1,500万円が非課税です。生命保険を活用した相続税の節税対策について詳しく知りたい方は「生命保険金にかかる相続税|非課税枠で相続税を節税できる」をご覧ください。

また、養子縁組をおこなうと相続税を節税することができます。養子縁組とは血縁関係と無関係に親子関係を生じさせることができる制度です。養子縁組をおこなうと法定相続人の数が増え、相続税の基礎控除額・生命保険金等の非課税額・死亡保険金等の非課税額が増えますので、節税効果が得られます。養子縁組について詳しく知りたい方は「【養子縁組で相続税対策】普通養子縁組と特別養子縁組の違い」をご覧ください。

相続税の節税対策の手法一覧については以下のページにまとめていますので、どのような節税手法があるのか知りたい方はご参考にしてください。

8.相続税の節税対策の相談

生前贈与など、相続税の節税対策をおこなう際に、まずおこなうことは相続税の試算です。相続税の試算結果に基づいて誰にいくら生前贈与するか判断します。しかし、税理士の多くは簡易的な試算結果に基づき、どのように生前贈与すべきかアドバイスします。

遺産規模が大きくなければ簡易的な試算でも問題ないのですが、遺産規模が大きい場合、簡易的な試算結果と実際の相続税の金額の隔たりが大きくなってしまうケースが多々あります。その結果、「簡易的な試算結果と実際の相続税の金額との差が大きく、適切な相続税対策ができていなかった」と後悔される方が少なくありません。

佐藤和基税理士事務所では、相続税対策サービスと相続税申告サービスを併せてご依頼いただいた場合、相続が発生する前に相続税の詳細な試算をおこないます。相続税の正確な金額を把握できますので、適切な相続税対策をおこなうことができます。

なお、相続税対策サービスと相続税申告サービスを併せてご依頼いただいた場合、相続税申告の料金の一部を前払いすることが可能です。相続税申告の料金を前払いすることで相続財産を減らすことができますので相続税を節税することができます。

例えば、遺産規模が15億円、相続税の税率区分が50%、相続税申告の税理士報酬が1,000万円の場合、相続発生後に税理士報酬を支払うと15億円に対して相続税が課税されます。しかし、仮に税理士報酬1,000万円の半分の500万円を生前に支払うと、相続財産は15億円-500万円で14億9,500万円となります。相続財産を500万円減らすことができますので、500万円×0.5で250万円の節税効果が得られます。

  相続財産
相続発生後に報酬を支払った場合 15億円
相続発生前に報酬を支払った場合 14億9,500万円

相続税申告の税理士報酬のうち、どのくらいの金額を前払いできるかについては別途お見積りさせていただきます。なお、遺産規模が大きくなければ簡易的な試算でも十分である可能性が高いでしょう。

簡易的な試算で十分なのか、詳細な試算をおこなった方が良いかについては遺産規模や相続財産の状況によっても異なりますので、どちらが良いかについてはご相談ください。相続税対策サービスについて詳しく知りたい方は下記ページをご覧ください。

9.佐藤和基税理士事務所が選ばれる7つの理由

佐藤和基税理士事務所は相続専門の税理士事務所です。佐藤和基税理士事務所の相続税申告サービスが選ばれる7つの理由について以下の動画にまとめましたのでご視聴いただきますと幸いです。

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相続税申告マニュアルとは、相続税申告の流れや必要書類について解説したマニュアルです。税理士選びのポイントや佐藤和基税理士事務所が選ばれる理由についても紹介していますので、ご参考にしていただきますと幸いです。

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