相続が立て続けに起こると最初の相続で相続税を支払い、またすぐに次の相続で相続税を支払うことになりますので大きな負担となります。そのため、相続が立て続けに起こった場合は「相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ)」という税負担を軽減する制度があります。
こちらのページでは相次相続控除についてご説明します。相続が10年以内に2回以上起こった方は相次相続控除によって相続税が安くなりますのでご参考にしてください。
相次相続控除とは相続が発生してから10年以内に次の相続が発生した場合、相続税の金額から一定の金額を差し引くことができる制度です。なお、最初の相続から次の相続が発生するまでの期間が短ければ短いほど控除額が大きくなります。例えば、父親が亡くなり、5年後に長男が亡くなった場合は相次相続控除を受けることができます。
相次相続控除を受けるには3つの要件を満たす必要があります。なお、最初に起きた相続のことを「一次相続」、2番目に起きた相続のことを「二次相続」と呼びます。
二次相続の相続人でなければ相次相続控除を受けることができません。なお、相続人でない人が遺言書で財産を受け取った場合は相次相続控除の対象外です。また、相続放棄をして生命保険金のみ取得した人も相次相続控除の対象外です。相続放棄について詳しく知りたい方は「相続放棄のメリット・デメリット|親の借金を相続しない方法」をご覧ください。
一次相続が発生してから二次相続が発生するまでの期間が10年以内でなければ相次相続控除を受けることはできません。
一次相続で財産を取得し、相続税を納税している必要があります。一次相続で財産を取得していたとしても相続税を納税していなければ相次相続控除を受けることはできません。
相次相続控除の控除額の計算式は下記のとおりです。
A×C÷(B-A)×D÷C×(10-E)÷10=相次相続控除額
A → 二次相続の被相続人が一次相続で課された相続税額
B → 二次相続の被相続人が一次相続で取得した財産額
C → 二次相続の相続財産の合計額
D → 相次相続控除を受ける相続人が二次相続で取得する財産額
E → 一次相続から二次相続までの期間(1年未満は切り捨て)
※B-AよりもCの方が大きい場合、Cの値はB-Aとなります。
法定相続人が妻・長男・二男の3人、妻が一次相続で10億円を受け取り、相続税を1億円支払ったとします。そして、その4年後、妻が亡くなり、長男と二男が3億円ずつ相続した場合の長男と二男の相次相続控除の控除額の計算をします。
まず、相次相続控除の計算式のAは二次相続の被相続人が一次相続で課された相続税額です。二次相続の被相続人である妻が一次相続で課された相続税額は1億円ですので、Aには1億円が入ります。Bは二次相続の被相続人が一次相続で取得した財産額です。妻が一次相続で取得した財産額は10億円ですので、Bには10億円が入ります。
Cは二次相続の相続財産の合計額です。二次相続の相続財産の合計額は6億円ですので、Cには6億円が入ります。Dは相次相続控除を受ける相続人が二次相続で取得する財産額です。長男と二男が取得する財産額はそれぞれ3億円ですので、Dには3億円が入ります。Eは一次相続から二次相続までの期間です。Eには4年が入ります。
A | 二次相続の被相続人が一次相続で課された相続税額 | 1億円 |
---|---|---|
B | 二次相続の被相続人が一次相続で取得した財産額 | 10億円 |
C | 二次相続の相続財産の合計額 | 6億円 |
D | 相次相続控除を受ける相続人が二次相続で取得する財産額 | 3億円ずつ |
E | 一次相続から二次相続までの期間 | 4年 |
それぞれの値を相次相続控除の控除額の計算式「A×C÷(B-A)×D÷C×(10-E)÷10」に当てはめると次のようになります。
1億円×6億円÷(10億円-1億円)×3億円÷6億円×(10-4)÷10=2,000万円
したがって、長男と二男はそれぞれ2,000万円の相次相続控除を受けることができます。相続税の計算方法について詳しく知りたい方は「【相続税の計算方法】相続専門の税理士がわかりやすく解説」をご覧ください。なお、下記は相続税の計算方法について解説している動画です。文章よりも動画で理解されたい方はこちらの動画をご覧ください。
相次相続控除の注意点を2つご紹介します。
相次相続控除を適用した結果、相続税がゼロになる場合は申告手続きをおこなう必要がありません。ただし、相続開始から3年10ヵ月以内に相続財産を売却する予定がある場合は取得費加算の特例を受けるために相続税の申告手続きをおこなうことをおすすめします。
取得費加算の特例とは相続開始から3年10ヵ月以内に相続財産を売却した場合、売却した資産にかかる相続税を譲渡益から控除することができる制度です。申告手続きをしていないと取得費加算の特例を受けることができませんので、相続税がゼロであっても3年10ヵ月以内に相続財産を売却するのであれば相続税申告をおこなうようにしましょう。
相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内ですが、遺産分割協議が期限までにまとまらない場合、遺産を法定相続分で分けたと仮定して相続税の計算をおこない、申告と納税をおこないます。そして、遺産の分け方が決まったら税務署に申告し直し、払い過ぎていた場合は還付を受け、不足していた場合は追加で納税します。
法定相続分で分けたと仮定して相続税を計算する際、相次相続控除の要件を満たしていれば相次相続控除を適用して相続税を計算することが可能です。なお、相続税の配偶者軽減は遺産分割が確定していないと適用できませんのでご注意ください。配偶者軽減については「相続税の配偶者控除の計算式|1億6千万円まで無税で相続可能」をご覧ください。
なお、相続税の申告期限までに相続税の申告と納税をしないと延滞税などが課税されてしまいます。申告期限に間に合わない場合のペナルティについて詳しく知りたい方は「相続税のペナルティ|無申告加算税・延滞税・重加算税とは」をご覧ください。
相次相続控除以外の税額控除を6つご紹介します。
亡くなる3年前以内に故人から贈与を受けていた場合、受贈者の相続税の課税価格に贈与額を加算する必要があります。この場合、贈与額に対して相続税と贈与税が二重に課税されてしまうことになりますので、相続税から贈与時に支払った贈与税を差し引くことができます。この規定を「贈与税額控除」と言います。
配偶者が取得した遺産額が1億6千万円と配偶者の法定相続分のうちどちらか大きい金額まで相続税が課税されません。この規定を「配偶者軽減」と言います。配偶者軽減については「相続税の配偶者控除の計算式|1億6千万円まで無税で相続可能」をご覧ください。
相続人が未成年者である場合は税額控除を受けられます。この規定を「未成年者控除」と言います。未成年者控除の計算式は「(20歳-相続時の年齢)×10万円」です。
相続人が85歳未満の障害者である場合は税額控除を受けられます。この規定を「障害者控除」と言います。障害者控除の計算式は「(85歳-相続時の年齢)×10万円」です。
国外にある財産を相続により取得した場合、外国でも相続税のような税金を支払う可能性があります。既に外国で相続税に相当する税金を支払っている場合は、相続税から一定の金額を差し引くことができます。この規定を「外国税額控除」と言います。
相続時精算課税制度を利用して贈与した額が2,500万円を超えた場合は贈与税を支払いますが、贈与税額を相続税から差し引くことができます。相続時精算課税制度については「相続時精算課税制度のデメリットと注意点|節税効果はない」をご覧ください。
税額控除について詳しく知りたい方は「相続税の税額控除対象7つ|外国税額控除・未成年者控除など」をご覧ください。
配偶者軽減がありますので、配偶者が相続する財産の合計が1億6,000万円以下、あるいは配偶者の法定相続分以下であれば相続税が課税されません。そのため、相続税を減らすために遺産の多くを配偶者に相続させようとする方がいらっしゃいますが、配偶者が亡くなった際の二次相続の相続税が高額になってしまう場合があります。
一次相続の税負担だけを考えて遺産の分け方を決めるのではなく、二次相続の相続税も考慮し、トータルの税負担が少なくなるように遺産の分け方を検討することをおすすめします。
佐藤和基税理士事務所の相続税対策サービスでは一次相続と二次相続の相続税のシミュレーション結果をお渡しすることができます。遺産の分け方や相続税対策の方法について検討する際はシミュレーション結果を参考にすると良いでしょう。佐藤和基税理士事務所の相続税対策サービスの詳細やお客様から選ばれる理由については下記をご覧ください。
相続税申告マニュアルとは、相続税申告の流れや必要書類について解説したマニュアルです。税理士選びのポイントや佐藤和基税理士事務所が選ばれる理由についても紹介していますので、ご参考にしていただきますと幸いです。
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