平成30年度の相続税・贈与税の税制改正大綱のポイント【2018年度】

平成29年12月14日に平成30年度の税制改正大綱が公表されました。こちらのページでは平成30年度の税制改正大綱のうち、相続税や贈与税など資産税関係の改正内容について解説します。なお、令和2年度の税制改正大綱の内容については「令和2年度の相続税・贈与税の税制改正大綱のポイント【2020年度】」、平成31年度の税制改正大綱の内容については「平成31年度の相続税・贈与税の税制改正大綱のポイント【2019年度】」をご覧ください。

1.平成30年度(2018年度)の相続税・贈与税の税制改正大綱のポイント一覧

平成30年度の税制改正大綱のポイントを7つご紹介します。相続税対策をおこなうことを検討している方はご参考にしてください。

平成30年の税制改正①小規模宅地等の特例の見直し

小規模宅地等の特例とは故人や故人と生計を一にしていた親族が使用していた土地を相続人が同じ用途で使用した場合、土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。例えば、夫婦2人で暮らしている中で夫が亡くなり、妻が土地を相続した場合、土地の相続税評価額を最大80%減額することが可能です。

平成30年度の税制改正によって「小規模宅地等の特例の一種である家なき子特例の要件」、「貸付事業用宅地等に対する小規模宅地等の特例の要件」、「特定居住用宅地等に対する小規模宅地等の特例の要件」が見直されました。なお、小規模宅地等の特例について詳しく知りたい方は「小規模宅地等の特例の要件【改正版】|土地の相続税評価を最大8割減」をご覧ください。

家なき子特例の税制改正の内容

小規模宅地等の特例の対象者は基本的には配偶者や同居の親族なのですが、別居の親族であっても相続開始前3年以内に自己所有の家に住んでいなければ小規模宅地等の特例を適用することができます。

自己所有の家ではなく賃貸物件に住んでいる親族が小規模宅地等の特例を受けられる制度を家なき子特例と言います。家なき子特例について詳しく知りたい方は「家なき子特例の要件【改正版】|小規模宅地等の特例で相続税対策」をご覧ください。

平成30年度の税制改正によって、家なき子特例の要件に下記の要件が追加されました。

税制改正で追加された要件①相続開始時に住んでいた家を過去に所有したことがない

これまでは住んでいた家を売却し、賃貸でそのまま住み続けていれば家なき子特例を受けることができました。しかし、税制改正によって過去に所有していた家に賃貸で住んでいた場合、家なき子特例を受けることができなくなりました。

税制改正で追加された要件②3年以内に3親等以内の親族の家に住んだことがない

これまでは家なき子特例を適用するために家を持っていない孫に家を相続させる方がいましたが、相続開始前3年以内に孫が両親の持ち家に住んでいた場合、家なき子特例を受けることができなくなります。なお、孫が親元を離れ賃貸物件に住み、3年が経過している場合は家なき子特例を受けることができます。

税制改正で追加された要件③3年以内に特別な関係の法人が持つ家に住んだことがない

「その者と特別な関係の法人」とは親族が経営する法人などが該当します。相続開始前3年以内に親族が経営する法人が持つ家に住んだことがある場合、家なき子特例を受けることができません。

貸付事業用宅地等に対する小規模宅地等の特例の税制改正の内容

貸付事業用宅地等とは人に貸していた土地です。故人や故人と生計を一にする親族が貸付事業用に使っていた土地を相続人も貸付事業用に使った場合、土地の相続税評価額を最大50%減額することが可能です。

平成30年度の税制改正によって、貸付事業用宅地等に対する小規模宅地等の特例の要件に下記の要件が追加されました。

税制改正で追加された要件

相続開始前3年以内に貸付事業用に使い始めた宅地等でないこと。

これまでは賃貸アパートや駐車場などを亡くなる直前に建設しても小規模宅地等の特例が受けられました。しかし、税制改正によって相続開始3年前よりも以前から貸付事業をおこなっていなければ小規模宅地等の特例を受けることができなくなります

ただし、故人が相続開始の3年前よりも以前から事業的規模で貸付事業をおこなっていた場合は、相続開始前3年以内に貸付事業用に使い始めた土地であっても小規模宅地等の特例の対象となります。

なお、この税制改正は平成30年4月1日以後の相続等から適用されますので、平成30年4月1日より前から貸し出されている土地は、相続開始前3年以内に貸付事業用になった土地であっても従来どおり小規模宅地等の特例を受けることができます。

貸付事業用宅地等に対する小規模宅地等の特例の税制改正について詳しく知りたい方は「貸付事業用宅地等の特例とは|平成30年度の税制改正で要件見直し」をご覧ください。

特定居住用宅地等に対する小規模宅地等の特例の税制改正の内容

特定居住用宅地等とは住宅として使っていた土地です。故人や故人と生計を一にする親族が住んでいた土地を相続人が居住用に使う場合、土地の相続税評価額を最大80%減額することが可能です。

平成30年度の税制改正によって、被相続人が介護医療院に入居したことで居住用に使われなくなった土地も小規模宅地等の特例の対象となりました。なお、介護医療院とは要介護者に対して医療・介護だけではなく生活の場を提供するための施設です。

特定居住用宅地等に対する小規模宅地等の特例の税制改正について詳しく知りたい方は「特定居住用宅地等とは|小規模宅地等の特例の対象となる土地の要件」をご覧ください。

平成30年の税制改正②一般社団法人等に関する相続税・贈与税の課税の見直し

一般社団法人は非営利法人であるため、株式会社のように利益配当ができませんが、収益事業を営んだり不動産や有価証券などの収益財産を所有したりすることは可能です。

しかし、税務上の非営利性が徹底された一般社団法人であれば一定の要件を満たすと収益事業以外から生じた所得に法人税が課税されません。一般社団法人が受けた贈与や寄付金収入に対して法人税が課税されないということです。

また、一般社団法人は資本金を出資する必要がなく、設立時に2人以上の社員がいれば設立することが可能です。株式会社のように持分という概念がなく、法律上誰かの所有になることがないので一般社団法人の財産には相続税が課税されません

一般社団法人の設立は簡単で税務上の様々なメリットがありますので、一般社団法人に財産を移転し課税逃れをする人も少なくありませんでした。そのため、課税逃れを防止する観点から一般社団法人に関する相続税・贈与税の改正がおこなわれました。

一般社団法人等に対して贈与があった場合の贈与税の課税の改正内容

一般社団法人に贈与することで贈与者の相続税や贈与税が不当に減少する場合は贈与を受けた一般社団法人を個人とみなして贈与税や相続税が課税されますが、税制改正によって要件が明確化されました。この改正は平成30年4月1日以後に贈与によって取得する財産に対して課税される贈与税や相続税に適用されます。

「相続税や贈与税が不当に減少する」の判定は原則として一般社団法人が下記の要件を全て満たしているかどうかでおこなわれます。

一般社団法人に贈与税や相続税が課税される要件

・法人の運営組織が適正であり、定款等に理事等に占める親族関係者の割合が3分の1以下とする定めがある。
・贈与者、法人の役員や社員、これらの者の親族等に特別の利益を与えない。
・定款等に法人解散の場合に残余財産が国や地方公共団体等に帰属する定めがある。
・法令に違反する事実等がない。

一般社団法人等に対する相続税の課税の改正内容

これまでは一般社団法人の役員が亡くなったとしても、一般社団法人を個人とみなして相続税が課税されることはありませんでした。しかし、税制改正によって同族経営の一般社団法人の役員が死亡した場合は一般社団法人に相続税が課税されることになりました。

税制改正後の一般社団法人の相続税に関する規定

・相続開始直前において、役員のうち同族役員が過半数の場合は相続税が課税される。
・相続開始前5年以内において、役員のうち同族役員が過半数を占めていた期間が3年以上の場合は相続税が課税される。

なお、同族役員とは3親等以内の親族等を指します。課税される相続税額は亡くなった役員から一般社団法人に以下の金額が遺贈されたとして計算します。

【相続税額の計算方法】
一般社団法人の純資産額÷同族役員の数=相続税額

上記算式の同族役員の数に被相続人も含めます。なお、平成30年4月1日以前に設立された一般社団法人については平成33年4月1日以降の相続から適用されます。

平成30年の税制改正③農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し

生産緑地とは地方自治体が都市の環境保全に役立つと認めた農地のことです。生産緑地に指定されると農地以外に土地を使用できないのですが、固定資産税や相続税の優遇措置が受けられます。

平成30年度の税制改正によって、都市農地の賃借の円滑化に関する法律等に基づく一定の貸付がされた生産緑地についても相続税の納税猶予が適用されるようになりました。

また、これまで三大都市圏の特定市以外の農地が相続税の納税猶予を受けるには20年以上農地として使用すれば良かったのですが、税制改正によって三大都市圏の特定市以外の生産緑地についても一生涯農地として使用しなければいけないことになりました。なお、三大都市圏の特定市の生産緑地は税制改正前から一生涯農地として使用する必要がありました。

平成30年の税制改正④事業承継税制の特例の見直し

事業承継税制とは後継者が非上場会社の株式を先代経営者から相続や贈与により取得した場合、都道府県知事の認定を受けると、相続税や贈与税が猶予されたり免除されたりする制度です。

平成30年度の税制改正では円滑な事業承継を促すため下記のように変わりました。なお、平成30年1月1日~平成39年12月31日の期間に贈与や相続により取得する財産に対して課税される贈与税や相続税に適用されます。

税制改正による見直し①対象となる株式の増加

これまでは株式の3分の2が80%免除されていましたが、税制改正後は全ての株式が100%免除されます。ただし、特例承認計画を都道府県に提出して認定を受ける必要があります。なお、特例承認計画とは認定経営革新等支援期間の助言を受けて作成する事業承継の計画書のことです。

税制改正による見直し②後継者の対象拡大

これまでは後継者1名だけが対象でしたが、税制改正によって後継者が2名または3名であっても事業承継税制の特例が適用されるようになりました。

税制改正による見直し③雇用確保要件の弾力化

税制改正によって現行の事業承継税制における雇用確保要件を満たさない場合であっても、雇用確保要件を満たさない理由を記載した書類を提出すれば事業承継税制の特例が適用されるようになりました。ただし、理由を記載した書類に認定経営革新等支援機関の意見が記載されている必要があります。

税制改正による見直し④経営環境が悪化した場合は納税猶予税額を免除

経営環境が悪化した場合に納税猶予税額を免除する減免制度が創設されました。特例承継期間(5年)経過後に特例認定承継会社の非上場株式を譲渡・合併・解散する場合、一定額の納税猶予税額が免除されます。

税制改正による見直し⑤相続時精算課税制度の対象拡大

税制改正によって推定相続人以外も相続時精算課税制度の対象になりました。相続時精算課税制度について詳しく知りたい方は「相続時精算課税制度の3つのデメリットと注意点|節税効果はない」をご覧ください。

平成30年の税制改正⑤土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置の創設

相続により土地の所有権を取得した者が相続登記をしないまま死亡した場合、相続登記を2回おこなう必要があります。相続登記を2回おこなうと登録免許税を2回分支払わなければいけません。しかし、税制改正によって平成30年4月1日~平成33年3月31日の期間に相続登記をおこなうと1回目の相続登記に対する登録免許税が免税されることになりました。

また、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」の施行日から平成33年までの期間に市街化区域外の土地で相続登記の促進を図る必要があると法務大臣が指定する土地の相続登記については固定資産税評価額が10万円以下であれば登録免許税が免除されます。

相続登記は義務ではないので、売却予定のない土地は相続登記がされないまま放置されることが多々あります。相続登記をするには相続人全員が遺産分割協議書に署名押印することが必要なのですが、相続登記がされないまま相続が進むと利害関係者の数が膨大となり、相続登記ができず、土地の売却ができないという問題が生じています。今回の改正はこのような相続登記の社会問題に対応するための改正です。

遺産分割協議書について詳しく知りたい方は「遺産分割協議書とは|相続財産の分け方についてまとめた書面」をご覧ください。

平成30年の税制改正⑥特定美術品に係る相続税の納税猶予制度の創設

故人が文化庁長官の認定を受けて美術品を美術館に寄託しており、相続人が寄託を継続した場合、美術品の課税価格の80%に相当する相続税の納税が猶予されます。ただし、相続人が寄託を継続する際に長期契約を結ぶ必要があります。

特定美術品の例

・重要文化財に指定された美術工芸品。
・歴史、美術、学術の観点で優れた登録有形文化財。

平成30年の税制改正⑦国外に住む日本国籍がない者の相続税・贈与税の納税義務の見直し

国外に住所があり日本国籍を持っていない者が「国内に住所がないこととなった時点前15年以内に国内に住所がある期間の合計が10年を超える被相続人や贈与者」から相続や贈与によって取得する海外財産については、相続税・贈与税が課税されないことになりました。

2.相続税対策の相談

相続税や贈与税に関する税制は毎年変わります。税理士であっても全ての改正内容を正確に把握するのは簡単なことではありません。しかし、税制改正の内容を十分に理解していなければ有効な相続税対策はできないでしょう。

最新の税制に合った相続税対策をおこないたい方は佐藤和基税理士事務所にご相談ください。佐藤和基税理士事務所は相続税専門の税理士事務所で、相続税に関する知識や実績が豊富です。相続税について相談したい方はお気軽にお問合せいただきますと幸いです。

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