近年の税制改正により、不動産を活用した相続税の節税対策は規制される傾向にあります。
令和6年1月1日以降は居住用の区分所有財産の評価方法が変更となり、タワーマンション節税の効果が低くなりました。
令和9年1月1日以降は不動産小口化商品の評価方法が変更され、貸付用不動産の評価方法についても、取得等から5年以内のものについては、評価方法が変更されます。
しかし、不動産を活用した節税が完全に封じられたわけではありません。
こちらのページでは、不動産を活用した節税が封じられた背景や今後の活用方法について解説します。
昔から相続税の節税対策として不動産が活用されていました。
しかし、区分所有のタワーマンションなどは時価と相続税評価額との乖離が大きく、問題視されていました。
平成29年度税制改正では、タワーマンションの固定資産税については改正がありましたが、相続税評価額の変更はありませんでした。
令和4年4月19日には、「路線価に基づく相続財産の評価は不適切である」という判決が最高裁判所第三小法廷で下されています。
概要としては、マンション2棟を約13億8,700万円で購入し、路線価に基づき約3億3,000万円で評価して申告をしています。
これに対し、評価通達6項を適用して不動産鑑定評価額である約12億7,300万円で更正処分を受け納税者が敗訴した事例です。
この判例では、乖離率が約3.8倍、乖離額が約9億4,300万円となっています。
令和4年4月19日の最高裁判決について詳しく知りたい方は「財産評価基本通達6項(総則6項)の判例解説|令和4年4月19日」をご覧ください。
令和5年度税制改正大綱では、タワーマンション節税の改正はありませんでしたが、「相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する。」と記載されていました。
その後、マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議と意見公募を経て、国税庁から「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」が公表され、令和6年1月1日以降の相続等から評価方法が変更となりました。
しかし、不動小口化商品などは上記の規制の対象とはならず、大きな節税効果がありました。
中には不動産小口化商品を購入直後に贈与し、受贈者が贈与後に現金化するようなケースもあったようです。
総則6項についても適用件数が増加しており、「納税者の予言可能性といった観点から批判等があり、評価方法の明確化等が要請されている情勢」と問題視された結果、令和8年度税制改正により、貸付用不動産の評価方法と不動産小口化商品の評価方法が見直されることになりました。
居住用の区分所有財産については、相続税評価額が市場価格と乖離する要因となっている「築年数」、「総階数」、「所在階」、「敷地持分狭小度」の4つの指数に基づいて、評価額を補正する方向で通達の整備が行われました。
具体的には、これら4指数に基づき統計的手法により乖離率を予測し、その結果、評価額が市場価格理論値の60%に達しない場合には、60%に達するまで評価額を補正するというものです。
概要をまとめると下記の通りとなります。
①相続税評価額が市場価格理論値の60%未満となっているもの(乖離率1.67倍を超えるもの)について、市場価格理論値の60%になるよう評価額を補正する。
②評価水準60%~100%は補正しない。
③評価水準100%超のものは100%となるよう評価額を減額する。
つまり、従来の評価方法が大きく評価額が下がっていたものについては、時価の60%水準で評価されるようになりました。
タワーマンション節税の規制内容について、詳しく知りたい方は「タワーマンション節税改正|6割評価の回避方法の解説」をご覧ください。
不動産小口化商品のうち、任意組合型又は信託受益権型の貸付用不動産については、その取得の時期にかかわらず、相続開始時又は贈与時における通常の取引価格に相当する金額によって評価することになりました。
この「通常の取引価格」とは、課税上の弊害がない限り、次の①、②又は③に掲げる価格等を参酌して求めた金額によって評価します。
①出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格、買取価格等
②事業者等が把握している適正な売買実例価額
③定期報告書等に記載された不動産の価格等
ただし、上記①、②又は③に該当するものがないと認められる場合には、貸付用不動産の評価方法準じて取得価額をベースに80%で評価します。
不動産小口化商品の評価方法の変更について、詳しく知りたい方は「2026年度税制改正【令和8年】|不動産小口化商品を徹底解説」をご覧ください。
被相続人等が課税時期(相続、遺贈又は贈与)前5年以内に取得又は新築した一定の貸付用不動産は、「通常の取引価額」で評価をすることになりました。
この「通常の取引価額」は、課税上の弊害がない限り、「取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の80%」で評価することができます。
貸付用不動産の評価方法の変更について、詳しく知りたい方は「2026年度税制改正【令和8年】|貸付用不動産を徹底解説」をご覧ください。
近年の税制改正により、不動産を活用した節税対策は規制される傾向にありますが、完全に利用できなくなったわけではありません。
タワーマンション節税については、時価の60%水準での評価に変更となりましたが、40%は今でも圧縮できます。
不動産小口化商品については、取得時期にかかわらず、通常の取引価額に相当する金額での評価となるため、通達が公表されるまでは明確ではありませんが、基本的には評価額の圧縮効果はなくなる方針になると思います。
ただし、小規模宅地等の特例は適用できる見込みのため、3年超保有することで、土地評価については、貸付事業用宅地等としての減額ができます。
小規模宅地等の特例について、詳しく知りたい方は「小規模宅地等の特例とは?適用要件・限度面積・注意点を解説」をご覧ください。
貸付用不動産については、亡くなる前(又は贈与前)5年以内に取得や新築をしたものについては、評価方法が変更されることになりますが、逆に5年超保有することで、評価方法は従来の評価方法になります。
そのため、今後の不動産を活用した節税対策では、早期の対策が必要になります。
今後の不動産を活用した節税対策では、長期保有を目的としたアパート建築や賃貸物件の購入が主流になると思われます。
アパート建築を利用した節税対策について、詳しく知りたい方は「アパート建築は相続税対策になる?|節税効果とリスクを解説」をご覧ください。
賃貸物件の購入について、特に節税効果が高く注目されているのが区分所有オフィスになります。
区分所有オフィスとは、オフィスビルの一室やワンフロアを、分譲マンションのように分割して、区分所有登記をして所有するものになります。
1棟所有オフィスは、大規模で、かつ、高価格になってしまうため、個人での購入はなかなか手を出すのは難しいと思いますが、区分所有オフィスであれば、比較的手を出せる価格帯になってくると思います。
区分所有オフィスが相続税の節税対策として有効な理由は、従来のタワーマンション節税や不動産小口化商品を活用した節税と同様の理由になります。
物件にもよりますが、時価に対して相続税評価額が80%前後圧縮されるものが多くあります。
区分所有オフィスは居住用ではありませんので、タワーマンション節税の規制の対象にはなりませんし、不動産小口化商品にも該当しません。
ただし、基本的には賃貸用として区分所有オフィスを購入することになると思いますので、貸付用不動産の5年ルールの対象にはなってしまいます。
そのため、5年超保有することが前提となります。
なお、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)については、3年超保有することで適用可能となります。
令和9年以降の区分所有オフィスの評価方法をまとめると下記の通りとなります。
| 取得から3年以内の相続等 | 時価の80%評価 | 小規模宅地等の特例なし |
| 取得から3年超5年以内の相続等 | 時価の80%評価 | 小規模宅地等の特例あり |
| 取得から5年超の相続等 | 従来の評価方法(時価の約20%前後) | 小規模宅地等の特例あり |
上記の通り、今後は早期対策がより重要になってきます。
区分所有オフィスは5年超保有することで大きな節税効果が期待できますし、一等地の物件を購入することで、優良な資産を所有できるメリットがありますが、逆に以下のようなデメリットもありますので、注意が必要です。
デメリット
・維持費(管理費、修繕積立金)が発生する
・管理組合による制約がある
・元本保証・賃料収入の保証がない
・流動性が低い
・地域や物件による差が大きい
・5年以内に相続が発生すると節税効果が低い
・行き過ぎた節税をした場合の財産評価基本通達6項の否認リスク
オフィス需要は立地条件に大きく左右されるため、物件選びが重要になります。
例えば、都心の駅近(駅から徒歩5分以内など)の物件、周辺の再開発の状況、上場企業・関連企業の集積など、高い付加価値のある物件を選ぶことで、トータル面で損をしないように注意しましょう。
区分所有オフィスによる節税は5年超の保有が前提となるため、財産評価基本通達6項の適用可能性は低いと思われますが、金額が大きすぎるなど、行き過ぎた節税対策については、注意が必要です。
区分所有オフィスを活用した相続税対策について、より詳しく知りたい方は「区分所有オフィスの相続税対策|評価方法と節税効果を解説」をご覧ください。
不動産を活用した相続税の節税対策は、近年の税制改正により規制される傾向にありますが、改正内容等を正しく理解することで、今後も不動産を活用した節税対策を行うことができます。
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