メルマガの読者様から以下のご相談をいたたきました。
10年前に賃貸併用住宅を建てています。
その3階を自宅として、1階、2階を賃貸としておりますが区分所有登記はしていません。
区分所有登記をした方が節税対策になったでしょうか?
一階を長女へ相続、2階と3階を妻と二女との考えです。
なお、妻、二女とは同居していますが、長女は結婚しており同居していません。
こちらのページでは、賃貸併用住宅への小規模宅地等の特例について、区分所有登記の有無による違いも含めて解説します。
賃貸併用住宅とは、1棟の建物の一部を自宅として使用し、残りを賃貸している住宅のことをいいます。
今回のご相談のケースですと、以下のようになります。
・3階:自宅
・1・2階:賃貸
・区分所有登記なし
ご相談のケースについては、評価方法と小規模宅地等の特例の適用関係は下記のようになります。
3階は自宅として自用地評価になります。
取得者が特定居住用宅地等の要件を満たす場合は、小規模宅地等の特例の80%減額ができます。
ご相談のケースでは、妻は配偶者のため、要件を満たします。
二女は同居しているため、要件を満たします。
ただし、長女は同居していないため、要件を満たしていません。
1、2階は賃貸として貸家建付地評価になります。
賃貸を継続する場合には、小規模宅地等の特例の50%減額ができます。
ご相談のケースでは、相続税申告期限までは、賃貸を継続して所有していれば、要件を満たします。
小規模宅地等の特例の細かい適用要件などを詳しく知りたい方は「小規模宅地等の特例とは?適用要件・限度面積・注意点を解説」をご覧ください。
ただし、区分所有登記ではないため、1階を長女へ、2、3階を妻、二女へということはできません。
全体を3人共有という形になってしまうため、3階の小規模宅地等の特例の特例は妻と同居している二女は適用できますが、同居していない長女は適用できません。
各階の評価方法と小規模宅地等の特例の適用関係をまとめると以下の表の通りになります。
※利用状況は申告期限まで変動がなく、所有し続けるものとします。
| 階 | 利用状況 | 評価方法 | 小規模宅地等の特例 | 適用可能な人 | 適用できない人 |
| 3階 | 自宅 | 自用地 | 特定居住用宅地等 | 妻・二女 | 長女 |
| 1・2階 | 賃貸 | 貸家建付地 | 貸付事業用宅地等 | 妻・長女・二女 | なし |
3階のご自宅については、共有で相続をすることで、長女が小規模宅地等の特例を適用できないことになります。
階ごとに分けたい場合には、区分所有登記が必要になります。
【Q】区分所有登記をした方が節税対策になったでしょうか?
【A】ご相談のケースでは、区分所有登記をすることで、ご要望の通り階ごとに分けることができ、かつ、3階のご自宅を小規模宅地等の特例の要件を満たす妻と二女が相続することになるため、節税対策になります。
つまり、区分所有登記をした場合の各階の評価方法と小規模宅地等の特例の適用関係をまとめると以下の表の通りとなります。
| 階 | 利用状況 | 評価方法 | 小規模宅地等の特例 | 適用可能な人 | 適用できない人 |
| 3階 | 自宅 | 自用地 | 特定居住用宅地等 | 妻・二女 | なし |
| 2階 | 賃貸 | 貸家建付地 | 貸付事業用宅地等 | 妻・二女 | なし |
| 1階 | 賃貸 | 貸家建付地 | 貸付事業用宅地等 | 長女 | なし |
区分所有登記をして階ごとに相続をすることで、小規模宅地等の特例も無駄なく適用できるようになります。
なお、評価方法については、区分所有登記にすることで、居住用の区分所有財産として評価額が高くなってしまうケースがあります。
基本的にはタワーマンションの評価差額を利用した節税対策を封じるためにできた制度となっているため、低層の建物は影響が低いと思いますが、注意が必要です。
居住用の区分所有財産の評価方法について、詳しく知りたい方は「タワーマンション節税改正|6割評価の回避方法の解説」をご覧ください。
【Q】区分所有登記は常にした方が節税対策になりますか?
【A】今回のケースは、区分所有登記をすることで、節税になりますが、区分所有登記をすれば必ず節税になるわけではありません。
例えば二世帯住宅のようなケースでは、区分所有登記をしていない場合には、1棟全体が自宅として小規模宅地等の特例を適用できたところ、区分所有登記をしてしまうことで、自宅として小規模宅地等の特例適用できる部分が少なくなってしまうか全く適用できなくなってしまい、逆効果になることもあります。
例えば、1階が被相続人の居住スペースで、2階が子(生計別)の居住スペースの場合、区分所有登記をしていなければ、2階に居住している生計別の子が相続しても1階と2階の両方が特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例を適用できます。
しかし、1階と2階を区分所有登記してしまうと、1階は被相続人の居住用を生計別親族である子が相続するため、小規模宅地等の特例の要件を満たしませんし、2階も生計別親族の居住用であるため、小規模宅地等の特例の要件を満たさないことになります。
そのため、区分所有登記はケースバイケースで、節税になるケースと逆効果になるケースがあります。
小規模宅地等の特例は、論点が複雑で難しいため、内容を勘違いしている方も多くいます。
判断が難しい内容の場合には、相続税専門の税理士に相談をすることをお勧めします。
メリット
・階ごとに所有関係を分けやすい
・相続時に特定の階を特定の相続人に取得させやすい
・結果として小規模宅地等の特例を適用しやすくなる場合がある
今回のご相談のケースのように1階・2階・3階で利用者が明確に分かれていて、将来、階ごとに別々の相続人へ取得させたい場合は、区分所有登記をすることで共有状態を防ぐことができます。
小規模宅地等の特例も適用要件を満たしている人に取得させることで、節税対策にも繋がります。
デメリット
・二世帯住宅などは区分所有登記をすると、逆に特例の適用関係が不利になるケースがある
二世帯住宅で親と子が同居している場合などは、区分所有登記をしてしまうことで、小規模宅地等の特例が上手く使えなくなってしまうケースがあります。
今回のご相談のケースでは、1階を長女へ、2階と3階を妻と二女へという具体的な遺産分割の予定がありました。
区分所有登記をすることで、小規模宅地等の特例の適用関係で不利になるケースもありますが、今回の相談のケースでは、逆に小規模宅地等の特例の適用範囲も広がり有利になります。
区分所有登記の問題は、分けやすさだけで判断をしてはいけないですし、小規模宅地等の特例の適用可否だけで判断してもいけない問題です。
・誰がどの部分を取得するのか(自宅部分と賃貸部分など)
・共有にならないように分けられるのか
・将来売却する可能性はあるのか
・小規模宅地等の特例の適用関係はどうなるのか
以上の点を考慮して、現状分析をしてから適切に判断をする必要があります。
中には、分けやすさを優先した結果、小規模宅地等の特例が有効に活用できずに、税金面で損になってしまうケースもあります。
必ずしも節税対策が最優先にはなりませんが、影響がどのくらいになるのかは事前に確認することをお勧めします。
小規模宅地等の特例は適用要件が複雑で、利用状況や取得者、申告期限までの所有の有無などもそれぞれ異なります。
例えば、同居していない子が家を購入してしまうと小規模宅地等の特例が適用できなくなり、相続税の負担が大幅にアップしてしまうケースもあります。
小規模宅地等の特例の判断に迷われている方や相続税の節税を検討している方は佐藤和基税理士事務所にご相談ください。佐藤和基税理士事務所は相続税専門の税理士事務所で、相続税の知識や実績が豊富です。相続税試算等の現状分析から相続税を節税するための各種対策のノウハウにも精通しています。
佐藤和基税理士事務所 代表税理士 佐藤和基
相続税専門の税理士法人出身。平成26年1月に相続税専門の税理士として開業。
「不動産の知識があれば相続税は取り戻せます」(2015年12月/住宅新報社)「税理士の失敗事例から学ぶ相続土地評価のポイント」(2018年2月/同友館)の著者。
相続税申告マニュアルとは、相続税申告の流れや必要書類について解説したマニュアルです。税理士選びのポイントや佐藤和基税理士事務所が選ばれる理由についても紹介していますので、ご参考にしていただきますと幸いです。
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